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【小学校での教科担任制】教科担任制で実施している学校で働く筆者が感じるメリットと懸念点

小学校5,6年生での『教科担任制』を中央教育審議会の特別部会で22年度から導入する案を示したとのニュースが入ってきました。

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『小学5、6年に教科担任制案 22年度から 授業の質向上など狙う 中教審』

https://news.yahoo.co.jp/articles/175361f17ed03a6118cb56c3a50546b282406de2

22年度というと2年後ですから、目前に迫っていますね!今回の記事では、実際に教科担任制を5・6年生で行っている小学校に勤務する筆者が、全国的に導入される可能性の出てきた教科担任制について感じることを書いていきます。

教科担任制導入の目的とは?

今回持ち上がっている『小学校5・6年生での教科担任制』についての目的が各種ニュースでは次のように取り上げられていました!

ポイント

専門性の高い教員が教えることで授業の質を高める

小学校高学年では学習内容が難しくなることを踏まえ、中学校への円滑な接続を図ることが求めれられると指摘。また、教科指導の専門性を持った教師によるきめ細かな指導を可能とする教科担任制により、学習内容の定着度の向上と学びの高度化を図ることが重要との見解。

教員の負担軽減

1人の教員が担当する授業時数が減り、教員の負担軽減につながることもメリットとして挙げられた。

そもそも教科担任制についてですが、特定の教科を専門に担当する教員が複数の学級で教える仕組みで、中学校や高校で導入されているので、中学・高校を卒業された方であれば、一度は経験しているものだと思います。(そもそも中学校や高校の教員は、教員免許が各教科ごとで発行されており、複数の免許を所持している場合以外は教科担任しかできないのが実際です)

小学校の教員免許は、免許を取得した時点で小学校現場にて全教科を教えられる免許となっています。ですから、人員の少ない小学校では、ありとあらゆる教科を担任が行っている現状があります。

 

教科担任制を導入している私の勤務校の導入理由

私は私立の小学校で勤務をしているのですが、教科担任制は何十年も前から実施されています。教科担任制を導入してきた理由がこれです!

専門性の高い教員が授業をし、授業の質を高める

というように、今回の中央教育審議会が掲げている目標と同様です。

そもそも私の勤務校では、中学入試を受ける児童も多く、文科省が示す小学校での学習内容の網羅はもちろん、中学入試にも対応した学習を行っています。そのため、国から配られる教科書以外にも、中学入試を視野にいれた別のテキスト等も使用して普段の授業を行っています。

中学入試を経験したり、お子様に中学入試を考えられている読者の皆様ならお分かりかと思いますが、中学入試の対応は普通に小学校学習をしているだけでは対応できません。膨大な暗記量、演習量、基礎力、応用力等、様々な力が必要となってきます。

ですから、私の勤務校では『各教科の専門性の高い教員が、各クラスを回って教科指導』を行う教科担任制を実施しており、子どもたちの学力向上を日々目指しています!

 

私の勤務校での教科担任制の導入は5・6年生のみ

ネットの書き込み等を読んでいると、『低学年からも実施た方がよいのでは?』などの書き込みも見られました。私も初めのころはそう思っていて、当時の校長にそのことを伝えたことがあります。

その時の校長の解答は・・・

子どもの発達段階を考えると高学年からがベストだと考えている!

というものでした。

私が教員になりたての時だったので、いまいちピンっとは来ていませんでしたが、全学年の担任を経験していてわかったことがあります。それは、低中学年は友人への依存度と、担任への依存度が高学年に比べてもかなり高いということです。

小学校が他の校種と大きく違うのは、発達段階が大きく違う子たちが6学年在籍しているという点です。

  • 一番下は幼稚園を卒園したばかりの6歳児
  • 一番上は中学校を目前にした12歳の子たち

人生経験でいっても倍ほど違う子たちが同じ環境で共存しているのが小学校なのです。

低学年の児童は、勉強をすることももちろん大切ですが、まずは新たな環境に慣れ、友人や学校の先生との信頼関係を築くことが大切なのです。

また、低学年の子どもたちを指導していると、高学年や中学生や高校生のように授業を授業としてきっちりできないことも多いです。我々教員がきっちりと指導計画を立てて臨んでも、想定以上に作業に時間がかかったりすることもあります。その分の補てんは、担任として全教科を教えているからこそ、帳尻を合わすことが出来ているのも実際なのです。

例を挙げてみると・・・

低学年で水泳がある時などは・・・

一年生の水泳の授業の時などは、水着に着替えさせるのも一苦労です。10分間の休み時間の間に30人以上を着替えさせて、きっちりチャイムで水泳の授業などまず不可能ではないでしょうか。実際には、1つ前の授業を少し早く切り上げて、お手洗いに行かせて、前倒しで着替えさせています。水泳の授業が終わったら、また休み時間の間に着替えなければなりません。ここでは、靴下がない!パンツがない!などないない合戦が始まったりします笑。こういったこともトータルで一日を考えて動く必要があるのです。

おそらくこのあたりが、以前校長と話をしていた時に言われた『発達段階のこと』なのだと思っています。また、特に低学年の児童は目を離すことが出来ません。担任として教室から離れるということ自体が色々なリスクに学級がさらされる状況となってしまうのも現状ではないかと思います。

 

実際に教科担任制で働いていて感じること

今回、中央教育審議会が掲げている目的に即して書いていきたいと思います。

専門性の高い教員が教えることで質を高まるのか

これについては”専門性の高い教員”が教壇に立てば授業の質が高くなると思います。

私の勤務校は私立小学校ですので、この実現は比較的容易なことです。

なぜかというと、私立小学校で勤務している場合は転勤が基本的にないからです。人員の大きな変更がないからこそ、専門性を持った人材の流動性が公立校に比べても極めて低いことが一因として挙げられます。

私の学校の場合での高学年の教科担任制の専門教科は大学時代に研究していた学科に関連する教科を担当することが多いです。また、教員全員が小学校免許だけではなく中高の教員免許も所持しているのでその免許に基づいている場合も多いです。

公立小学校の先生方は転勤がありますから、私立小学校のようにうまく専門性を持った先生が配置されることは難しいでしょう。

とはいえ、今までは全教科を教えていたわけですから、それを教科担任制にすることで先生自身のスキルアップができる可能性は大いに高いといえます!

これは、その学校の担当になった先生に頑張ってもらいましょう!教材研究がより深く行えるはずですから☆

 

教員の負担軽減につながるか

これについては、個人的には疑問ですね。何が疑問なのかというとこの点です!

1人の教員が担当する授業時数が減り、負担が軽減する

というところです。

仮に教科担当を割り振られたとしても、自分のクラスがなくても他のクラスでの授業はあるわけです。実働時間は変わらないですよね。

また、教員の数が多い学校の場合はいいかもしれませんが、そうではない場合には、今ある人材で担当を割り振らなければならず、複数の教科を担当をする先生たちも増えてきそうな気がします。

さらに、仮に先生たちの空き時間が増えたとしても、結局のところクラスの子どもたちの責任は担任にあるので、もしも問題を起こすような児童や、見ておかなければならない児童がいる場合などは、結局空き時間などもその補助にあたったりすることになりそうなので、実質的な負担は変わらない気がします。

ただし、教材研究についての時間的負担は軽減される可能性が高いです。

教科担任制になることで、少なくとも1つくらいはこれまで教えてきていた教科が減るわけですから、その分の教材研究の時間は減り、その時間で他の教科の研究にあてることで、より専門性を高めることもできるようになるはずですよね!

 

筆者が思う今回の案の懸念点と課題

先生の専門性を活かすことができるのか

上述した通り、私のような私立小学校の場合は人材の流動性が低いので、専門教科が専門たる所以も出てきますし、実際に指導力のアップは身をもって感じることが出来ています。

公立の小学校の場合は転勤があるので、新たな赴任先ではいきなり専門教科の変更を迫られる可能性も大いにあると思われます。もちろん全ての教科の専門性を高めておくべきではありますが、この点は少し懸念しています。

また、公立の教員をしている友人たちの話を聞いていると、4月からの新年度の勤務校が決まるのが3月中旬や下旬に決まる場合もあるらしく、ぎりぎり過ぎて引継ぎや公文書作成などで春休みはバタバタだと嘆いていました。そしておそらく、各教員の専門性を考慮した人事配当などは現実問題として難しいと思われます。

子どもの様子の今まで以上の把握

教科担任として他のクラスへ行っている最中、自分のクラスの様子はわかりません。友人関係のトラブル等、見守りが必要な子どもがいても授業にはいかねばなりません。教員間で情報をこれまで以上に共有し、その授業で起きていること等もしっかりと把握しておく必要があります。

教科横断的な指導は難しい?

今現場では、教科横断的な学習をしていたりします。算数で学習した統計を社会科で活かしたりなどです。そういったことは、教員間の密な連携があればもちろん実施は可能ですが、このような学習方法は教科担任制でない方が実施しやすいかもしれません。

 

本日のまとめ

ネットの書き込みを見ていると、教員ではない方や教員であろう方の書き込みが色々あり参考になりましたが、今回の話、私はヤフーニュースで知りました。

先日、コロナ禍で突如持ち上がった『9月入学制度』のように、現場の教員からするとまさに寝耳に水・・・。しかも2年後の導入とのことです。

まずはコロナの収束を願うばかりですが、この教科担任制の導入の案についても大きな課題になりそうです。個人的には、文科省が掲げる目標が達成できるようにしっかりと制度設計されるのであれば、この制度の導入は良いのではないかなと思います。

ただ、現場へ丸投げして、制度が出来たことによって現場が無理矢理のその場対応になってしまっては本末転倒。生きた制度になるように制度設計してもらいたいものです。

 

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