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オンライン授業の現状と、ハード面以外の壁、それは一体・・・?
私の勤務校は、コロナウイルスへの対応で現在は休校です。教員の我々は、ほぼ出勤ですが。出勤している私は学校で何をしているのかというと、子どもたちへの教科書や課題などを配送するための箱詰め作業や伝票作成などの事務的なことに時間をとられながらも、彼らの学習補償のためにオンラインで学習するためのコンテンツを作成しています。コンテンツを作る側になって、オンライン授業には予想外の障壁がありました。現場の立場からオンライン授業の現状について書きます。
オンライン授業の現状
学校が休校になり、各家庭にいる子どもたちに対して各校で対策がなされています。私の勤務校も例外ではなく、オンライン授業をもう展開しています。
<現時点で活用可能なオンライン学習>
・ZOOMを利用した授業の生配信
・教育系サイトの利用
・先生がコンテンツを作成して各家庭でダウンロード
このような展開が大半であると思われます。これに加えて、プリント課題や、問題集に取り組ませているところもあるでしょう。
私の勤務校では、コンテンツを作成して各家庭でDLしてもらう形をとっています。上にあげた、オンライン授業の一例にはメリットもデメリットもあります。それを次に書きます。
各オンライン授業のメリットとデメリット
ZOOMを使った授業のライブ配信
<メリット>
ライブ配信の最大の利点は、画面越しであるとはいえ、学校での授業に近い形で展開ができることです。教師側も目の前に子どもはいませんが普段に近い形なので、対応しやすいものです。大手進学塾はこの形で現在授業展開されている模様。
<デメリット>
ライブ配信であるため、各家庭での回線の不具合、体調不良などでその子どもが授業に出られなかった場合の学習補償が難しい。学校での授業を欠席した場合は、休み時間などで対応できるが、登校できない現在のような場合は難しい状況。また、兄弟姉妹がいる場合、それぞれに対して同時にライブ配信があった場合は、家庭での端末不足などになる可能性も。
教育系サイトの利用
<メリット>
・コンテンツがもともと作成されているので、容易に利用することができる。また、WEB上にあるために、いつでも学習に利用することができる。
・キャラクターや効果音なども使われていて、子どもたちには興味を持ちやすい。
・NHK for schoolなどは子どもでも扱いやすいかも。
<デメリット>
・多くのものが各単元を解説しているわけではなく、実験動画やトピック的なものが多いため、学校で行うような積み重ねていくような学習展開が難しい。
コンテンツを配信して各家庭でDL
<メリット>
・各校でその子どもたちの学習状況や実態に即したものを作成できるので、現実的に子どもの状況にマッチした展開が可能。
・ライブ配信ではないため、DLすればいつでも学習することができる。
<デメリット>
・映像のコンテンツを作成すること自体に莫大な時間がかかる。
(実際、私はパワーポイントで授業を作成し、実際の授業で話すような内容を録音し、動画編集をして教材を作成しています。私は元々動画編集などを趣味でやっていたので操作等に苦労はありませんが、いってみれば、先生が明日からいきなりYOUTUBERになれと言われているようなものです。しかもコンテンツとしてアップするわけなので下手なものは出せません。台本も書きますが、録音中に噛んでしまったり言い間違えたら全部やり直しです笑)
オンラインコンテンツを作成し始めてぶつかった壁・・・
皆さんはこれ、何だと思います?ネットなどでは、各家庭にルーターを配布するとか、1人1台の端末を配布するとかハード面の普及が遅れていることがよく取り上げられていますよね。ここでぶつかったその壁というのが・・・・・
著作権です。
学校で使うあらゆる教科書や資料集などの作成には、文章を書く方、写真を載せたカメラマン、イラストを描いたイラストレーターなど様々な方が関わっています。もちろんそれには著作権が存在しています。
<参考>
⇒https://www.cric.or.jp/qa/cs01/index.html
とはいえ、学校で授業をしている時には、みんなが同じ教科書や資料集を持っているのでその場で共有することができますし、著作権法第35条第一項の規定により、教育機関では必要と認められる限度においては、著作物の複製などが認められています。ですから、教科書の資料などを使ってプリントを作成することもできるわけです。
ですが今回は違います。ZOOMでのライブ配信や、私の様にコンテンツを作成してネット上にアップする場合は、この規定に適合しないのです!
簡単に説明すると、学校現場において、他人の著作物を利用して授業を展開することは認められているが、それをWEB上に配信するとなると著作権の学校現場での規定からは漏れてしまうということなのです。
著作権を守りながらコンテンツ作成をすると・・・
もちろん著作権は守るべきものですが、コンテンツを作成する上では各教科かなりしんどい状況が発生します・・・。
<一番融通が利いている科目は算数>
算数の教科書は、学習内容に合わせて各教科書会社がイラストなどを作製していることが多く、著作権自体も教科書会社が保有していることが多いです。ですから、教科書会社に確認を取ると、使える素材が多いように思います。
<国語はかなりきつい・・・>
算数と国語は1年生からありますから、国語もコンテンツ作成の比率は高くなります。ただこの国語が大変です。物語文や説明文など、著作物の集合体なのです。うちの国語担当が教科書会社や文化庁などにも問い合わせて聞いてみたところ・・・・
・文章を写してそれを放映するのは不可
・教師が範読(見本読み)をして配信するのは不可
・挿絵などをパワーポイントなどに利用するのも不可
こんな状況です。ですから、例えば子どもたちに教科書を読ませたい場合は、こんな指示をコンテンツ内で出します。
『一度、動画を止めて、今から教科書p○○からp○○を読みましょう。読めたらまた動画を進めましょう』
と、こんな状態です。しかも学校が再開されていないので新学年の教科書もやっと宅急便で子どもたちに届けられたような状況ですから、遅れは必至かと。
<社会もきつい・・・>
社会は、画像資料やグラフなど本文以外の学習要素が多い教科です。これも教科書会社に確認すると、写真などは撮影者に著作権があるので許可が出せないとのこと。またグラフについても教科書会社が作成しているものは利用してよいとのことだが、紙面上ではどのグラフを誰が作成しているのかはわかりません。それを伝えたら『そうですよね。その場合は先生方で許可を取っていただくか、エクセルなりでグラフを作ってもらうしか』というのが現実です。
これ以外の教科も同様の状況が起きています。この現状に文化庁には問い合わせが殺到しているらしいですが、今はこの現状を好転させるべく動いていますというのが実際のところで、まだ現状としてはあまり変化がありません。テレビでオンライン授業をしている先生方の映像がニュースなどで報道されていますが、そのあたりはクリアされているのかな?と少し疑問が残りますよね。
本日のまとめ
オンライン授業を進行する上でのハード面以外の障壁について知っていただけましたか?著作権が授業コンテンツ配信の上で現状ではかなりつらい状況です。どこまでのこの休校措置が続くのかはわかりませんが、早い段階で何とか解決してもらいたいというのが本音です。進学塾がライブ配信をできているのはおそらくオリジナルテキストを各塾で作成していて、著作権自体が出版社にあるから比較的容易に行えているのではないかなと思います。ネットニュースなどを見ていてもハード面のことばかりで、著作権については全然触れられないので、少しでも知っていただければと思いました。またこの週末、ZOOMを使ってのライブ配信授業がニュースで取り上げられていいたりしましたが、圧倒的に1クラスの人数が少ないところはすぐにでも可能なのだなと思いました。そうした学校からでも少しでも早く子どもたちの学習補償がなされていくことを祈るばかりです。
<追記>
4月28日より改正著作権法が2020年に限り、施行されました!これは大きな進歩ですね☆
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